再生




あなたの男性器をホルマリン漬けにしてお守りがわりに持ちたい。

22歳になって、まともになっている。

もうこの先の人生、飛び降りる理由も誰かの大切な人を奪う理由もなくなるのだ。

新しい職場にもどうにかこうにか馴染んで、ゆっくりと親にも甘えられるようになり、整形せずともわたしはそれなりに可愛らしいのだ。

それなのに一人の昼も夜もいつまで経ってもなんでだか慣れず、あなたが帰るのを待って少し肌寒くなったベランダで好きじゃない煙草を何本も吸うのだ。

これから先、もうこれ以上の幸せなんてない気がしている。

それと、もう今まで以上の苦しいこともない。

それなのになんでだかときどき、名前を知らない道端の誰かと裸で抱き合えたらいいのにだとか。

色黒の健康的な自分の体を、薬や剃刀で傷つけたいだとか。

そんなことを、本当にときどき、深く考えてしまう。

勝手に涙がこぼれて、何も手につかなくなる。

自分がいらない子なんかじゃないって何十回何百回と言い聞かせても、わたしは別にわたしが要らない。

一歩前に踏みだす勇気なら、死でも生でもどっちだって良い。

そんなに頑張っていなくとも、どっと疲れてめちゃくちゃに甘いチョコレートを食べる日というのは大切。

用足しをした帰り、甘いものをいくつか買って家路に着くと、同じようにコンビニの袋を提げたあなたが優しい顔で笑ってた。

「アイス買った」。

あなたが休日の晩ごはんはあなたのつくるあったかいごはんだから、わたしは日曜日が好きになった。

煙草がなくなって、手を繋いで二人コンビニまで歩く道も好きになった。

布団を敷きなさいと何度注意しても、いつのまにかすぐにフローリングの上で眠るあなたの寝顔は生きる意味を見出したがるわたしの唯一の救いだ。

あなたと毎日を生きるたびに、わたしはどんどんと弱くなっていく。

でもそれは心地の良い弱さだ。