家具



靴箱をさあ、もっと高いものに買い替えたほうが良いと思ったのよ。だって毎回靴を乗せるたびにネジが外れてさ、その度にわたしが玄関先で作り直すわけ。狭いからって靴箱を外に出して真剣な顔してやってるとね、「寒いから」なんて言ってあいつはドアを閉めるんだよ。それでどうにかこうにか作り直して玄関に設置しても、ありがとうの一言もないの。ふてくされてそっぽ向いて寝てやったわ。わたしのブス顔なんてそっぽ向いてるのが丁度良いんだろうけど。でね、次の日靴を乗せたらまた壊れるわけ。結局面倒くさくてそのまま。作り直さないよ〜、 ありがとうって言ってくれないもん。でも今度のひとはさ、真逆。靴箱が崩れても進んで作り直してくれると思うの。そしたらわたしありがとうっていっぱい言うな〜。わたしが作り直したとしても、彼はきっと褒めてくれると思うんだ。すごいね、ありがとうねって。  まあまだ、同棲の「ど」の字も無いんだけどね。前の人との同棲?えー、なんか思ったけどあれって同居だったのかもね。わかんない。心配してた気持ちがどこかに行っちゃったよ。ショートメールはもう返さないことにしたし。わたしって薄情者かな?そんなことなくない?だって靴箱を作り直しても「ありがとう」が無かったしさ。まあ、後付けの理由だけどね。なんとなく今それを思い出したから言ってみただけ。でもやっぱりわたし、靴箱を作り直したらありがとうって言ってくれる男のひとが好きだなあ。