大人
レジを挟んで向かい側に立つきみの手をとり、どこか遠くへ行きたいと。
勤務中何度願えどそれが叶わないのはぼくもきみも大人だからだ。
くそみたいなバイト先。
くそみたいな人間。
同調してしまう自分に反吐がでる。
自分が「酷く性格の悪い」ようにおもえて、涙が溢れるのだ。
悪口なんか言いたくない。
悪口なんか言いたくない。
苦しくて息もできないほど。
言い過ぎだが、言い過ぎでもないよ。
息したくない。
きたねー空気。
インフルエンザ感染よりもこわい。
悪い人に感染。
一生治らない病?
田舎のコンビニのレジに立って、みんな見てくれ!と言わんばかり。
「腕を切りたい」その瞬間に、きみはいつも会いに来る。
それでただ笑ってくれるんだ。
それがぼくは好きで好きでどうしようもない。
きたねー空気。
きたねーやり方で終わらせたいが、勤務中何度願えどそれが叶わないのはぼくもきみも大人だからだ。
二人は優しい大人なんだ。
くそみたいな。きたねーような。
そんな奴らは みんなほんとに大人なの?
もしかしたらぼくら、ぼくときみ、二人だけ子供のままなの?
きたねー生き方が上手にできないのは。どうして。
「子供のように純粋すぎて傷つきやすいのだ」と言われるなら、このまま子供で居たい。
「子供だからまだ社会をなにも知らない」と言われても、このまま子供で居たい。
優しい二人がもしもまだ子供なのだとしたら、ずっと二人で子供で居ようよ。
傷つきやすい心でも、上手に生きられない心でも。
それでもきみとぼくだけは、ずっとずっと子供で居ようよ。ずっとずっと優しくあろうよ。
でもね、きょうもレジを挟んで向かい側に立つきみの手をとりどこか遠くへ行かないのは ぼくもきみも大人だからだよ。ぼくたちは大人なんだよ。