再起



「おちんちん」て言うのはなんだか子供みたいだね。絶妙ないやらしさが。もっといやらしく言ってみて。



昔浮気相手に言われたそんな気色悪い言葉を、不意に思い出していた。



バスケが得意で顔だちも端正な男の子だったけれど、あいにくめちゃめちゃにどギツイ性癖をしていた。



彼が わたしが人生ではじめて浮気をした相手なのだけれど、「付き合う」ということはなく一度性交渉をして終わるわけだ。



「星が見えるよ」そう言う彼の部屋の天井は、確かに電気を消すと天井に細やかな光が浮かび上がるものだった。



はじめて浮気をしたとき、突然襲ってくる罪悪感で泣いてしまった。
彼は「みんなやってるから」と笑って言っていたと思う。



その浮気が原因で、はじめての恋人と別れた。そのときの恋人がショックで睡眠障害になったりうつ病になってしまった。わたしが出会い系をやって、いろんな人に抱かれまくってるだなんて嘘を流された。



高校時代、早退や欠席の多かったわたしは よく保健室で暇をつぶしていたんだけれど、隣のベッドでよく別れた恋人が休んでいた。ツイッターをぼんやりと眺めながら、彼と先生の会話を盗み聞きしていた。



あのときちゃんと謝っていたら、もしかしたら何か違ったのかななんて虫のいいことを考えてみたりもするけれど、高校卒業して数ヶ月後にツイッターをフォローするも、即ブロックされてしまうので大丈夫です。



はじめて腕を切ったのが、そのときの浮気相手の「本当に好きな相手だったら、初っ端からエロいこと要求しねーから」というわたしに対しての捨て台詞。
思いだしては、なんとも情けない。



心臓が きゅーってして、涙が止まらなかった。無心で腕を切って泣き疲れて寝た。男ってやっぱサイテーだ。



生き方にズレとか迷いが生じてきたのは自業自得であるがゆえに、人一倍遠回りしても優しくならなきゃいけないと思う。



いま人に優しくありたいと必死なのは、たぶんときどきそのはじめての恋人のことを思い出すからだと思う。



反省したフリをして、その後数人と付き合ってからも嫌なことがあるたびに当たり前のように何度も浮気をするのだけれど。
好きでもないのに好きなフリして抱かれる労力マジで別なところに使え。それに尽きる。



根本のクソは治らないから、もしかしたらわたしも死ぬまでクソかもしれない。高頻度で嫌になる。免罪符みたいに腕を切ることが。許されようとしてるのが見え見えの心が。



「過去がどうこうじゃなくて、今どう生きるかだよ」みたいな綺麗事があるけど、でも傷ついただれかの心は一生完治しないよってあの頃の自分に教えたい。



今の恋人の、とびきり甘やかしたような どろどろの優しさにズブズブと埋もれてしまうのは、はじめての恋人の真っ直ぐだった愛情と重ね合わせている節があると自分でわかっている。



神様は居ないんだけれど、誰かしらのくれた何かしらのチャンスだな なんて。



もう二度と意志の弱さを愛の脆さを人のせいにするな。