無題
傾慕
早朝に目が覚めて好きな曲を聴いてるときくらいしか心休まることなんてないな。特定の誰かに向けて書いたブログは伝わらなかったり不特定多数に向けたツイートは誰かを傷つけたりしてほんとに嫌になっちゃう。ミーハーだけど美学があって、酔ったときにLINEであまえるのは彼氏にだけみたいなとこがある。さっきコンビニへ行くのに運転していて ふと思い出したことがあって、以前はよく飲みの帰りの彼氏を迎えに行ったことがあった。迎えに行くとベロベロに酔ってベンチで眠っていたりした。乗せて帰る途中つらそうに「気持ちわるい」なんて言う。道端で吐いてるのをじっとみてた。帰り際にするキスが葡萄チューハイのゲロ味で、これが幸せの味か と思った。
最近あんまりベロベロに酔わないし、毎晩の晩酌は安いチューハイ一缶だし、「迎えに来て」って電話も少なくなった。「ねえあのさあ他の誰かとしてるからわたしとしなくても平気になったの」なんてダサいけど言うよ。「何かあっても最後はわたしの所に帰ってきてね」だなんて綺麗事は、生理前情緒不安定言いたくないな。「好きも愛してるも可愛いも結婚したいもヤりたいも抜きたいもわたしじゃなきゃころすから」「ねえ他の誰かとしてるからエロいことしないで平気なの」。「ねえなんでそんなこと聞くの」って寂しい顔する君に「ねーごめんねだいすきだからね一番すき」なんてぶりっ子してハグするのが好きな悪趣味な女がここに居ますよ。わかってんだぜんぶぜんぶ。今の君の生き方が、わたしに向けての愛なんでしょ。迷惑かけないようにと優しく丸くなってる君が愛しくてさ、でも時々葡萄チューハイのゲロ味キスくらいどギツいの待ってたりするんだぜ。酔ってさ「ヤりたい」しか送れなくなっても、君ならわかってくれんだろ「愛してるよ」に訳すなんて。もしも寂しくてどうしようもなくなったら またわたし金髪みたいにするからさ、黙ってハグしてくれないか。君にならネットストーキングされたいよ。君になら指のひとつくらい切り落とされたいよ。きのうも鬼LINEすみませんでした。夜遅くまでお仕事ご苦労様です。はい、今日も勉強 バイトがんばります。頑張るんで葡萄チューハイのゲロ味キスが欲しいんですが。
浮気
家具
靴箱をさあ、もっと高いものに買い替えたほうが良いと思ったのよ。だって毎回靴を乗せるたびにネジが外れてさ、その度にわたしが玄関先で作り直すわけ。狭いからって靴箱を外に出して真剣な顔してやってるとね、「寒いから」なんて言ってあいつはドアを閉めるんだよ。それでどうにかこうにか作り直して玄関に設置しても、ありがとうの一言もないの。ふてくされてそっぽ向いて寝てやったわ。わたしのブス顔なんてそっぽ向いてるのが丁度良いんだろうけど。でね、次の日靴を乗せたらまた壊れるわけ。結局面倒くさくてそのまま。作り直さないよ〜、 ありがとうって言ってくれないもん。でも今度のひとはさ、真逆。靴箱が崩れても進んで作り直してくれると思うの。そしたらわたしありがとうっていっぱい言うな〜。わたしが作り直したとしても、彼はきっと褒めてくれると思うんだ。すごいね、ありがとうねって。 まあまだ、同棲の「ど」の字も無いんだけどね。前の人との同棲?えー、なんか思ったけどあれって同居だったのかもね。わかんない。心配してた気持ちがどこかに行っちゃったよ。ショートメールはもう返さないことにしたし。わたしって薄情者かな?そんなことなくない?だって靴箱を作り直しても「ありがとう」が無かったしさ。まあ、後付けの理由だけどね。なんとなく今それを思い出したから言ってみただけ。でもやっぱりわたし、靴箱を作り直したらありがとうって言ってくれる男のひとが好きだなあ。
終末
もしも地球がなくなるときは、車を飛ばして会いに行くよ。わたしはやっとの思いでバイトを辞めるから、あなたもその日に会社を辞めて。あんまりないお金でちょっと遠出をしたいね。マイヘアは聴くのをやめようか。RADWIMPSならかけても良い?ラーメンや肉もいいねなんて言って、きっと必ず回転寿司。はま寿司も良いけれど、八千代寿司に行きたいです。部屋で飲むのにお酒を買おう。シラフに戻って眠れるように、ほろよいで我慢するからね。最後だからちょっと高い部屋でも平気。電波の悪い部屋で良い。わたしはやっとの思いでTwitterを消すから、あなたは先輩の電話にでるのをやめて。あなたのお母さんは優しいから、多分きっと連絡をくれるよ。そしたらちゃんと「ありがとう」って言ってあげてね。わたしのお母さんは「早めに帰ってきなさいよ」なんてLINEをくれると思う。わたしもちゃんと「ありがとう」って返すからね。恥ずかしいけどお風呂は一緒に入ろうか。最後だからってエッチなチャンネルは観ないでね。あなたがくれたネックレスと写真を枕元に置くから、笑ってくれて良いからね。ロマンチックな空気は苦手だから、「生理がかぶらなくて良かったね。」なんてわたしは言おうかな。あなたは意外と素敵なことを言う気がするけれど。難しい話をしても良いけれど、とりあえず目を瞑って居ようと思う。手を握っちゃうかなんかしようと思う。地球がおわってもみんなが死んでも、あなただけは幸せなところに行けたらいいなと思う。
健忘
SNSで出会ったあの人やあの子のことを忘れていくことがある。それってちょっと寂しいけれど、当たり前といえば当たり前だなあ なんて。
寿司
「そのリュックまだ使ってるの?」
東京 中野 人生はじめての すしざんまいにて。
「わたし、荷物多いからね。大容量がいいでしょ。」と、笑ってみせた。彼から貰った大きなリュック、離れてからも使っていた。とくに意味はない。というか、全く意味はない。
だけど多分 きょうこのリュックを背負ってきたのは、【忘れてないんだよ】というアピールでもあった気がする。
わたしが送った「迎えに来てくれるなら、また一緒に暮らそうよ。」のメールに返信が来なくなった。
およそ2年の月日が過ぎて彼のほうから連絡がきた。
月日というのは不思議なもので、あんなにドロドロギスギスとしていた関係を、笑って寿司を食べれるほどにしてくれる。
月日がすごいのか、寿司がすごいのか。
「はまち好きじゃなかったっけ?」忘れてないんだよのアピールを、また一つしてみる。
「薬の副作用で容姿が酷くなってしまったけれど。」とは聞いていたが、正直、想像以上に彼の姿形が変わっていて なんだかちょっとさみしかった。
でも、もしかしたらそのおかげでこんなに優しい時間だったのかもしれない。彼が変わらずに居たらきっと、わたし寿司なんて奢ってあげなかった。
人に会わなくても髪は切ったほうがいい とか、副作用がおさまって痩せたらまたかっこいいんじゃないか、とかを教えてあげた。
「彼氏がね、回転寿司が好きで、デートでいつも回転寿司を食べるんだよ。」と わたしが言うと、彼はつまらなそうな顔をしてうんうんとうなづいた。
転がり込んだ日にはじめてつくった肉じゃがとか、毎朝つくったお弁当 喧嘩してゴミ箱に捨てられた日とか、薄汚い布団、あの日観たロッキーホラーショー、詰まった排水溝、「あの子の誕生日を祝う」だなんてちょっと恥ずかしいツイート。
ぜんぶ忘れていたようで、ぜんぶ忘れていなかった。
戻りたいと思うことはもう無くなってしまったけれど、もしもまた もう一度あの日に戻れるのなら、今のわたし きっとあなたに優しくできるよ。
黙々と寿司を頬張る少しブサイクになった彼に、「おいしいね。」なんて笑ってみせた。